離婚訴訟の終盤で新たな証拠を提出できるか(結論:できる)

離婚訴訟がかなり進行し,そろそろ判決も見えてきたという時期に,離婚訴訟の結果を左右するような証拠を新たに発見してしまった場合,訴訟に証拠として提出することができるでしょうか。

民事訴訟では,民事訴訟法157条で時機に後れた攻撃防御方法の却下等が規定されています。
この規定は,簡単に言うと,訴訟が終盤にさしかかってしまったときには,これまで提出しなかった証拠や主張を提出することが許されないとするものです。
典型的な場合として,最初の裁判(一審)で提出しなかった証拠等を,控訴審で提出するような場合が挙げられます。
提出しようとする証拠が事実であったとしても,提出することが許されないことにもなるので,一審で弁護士がきちんと適切な活動をしていたかが重要になってきます。

しかし,離婚訴訟を含む人事訴訟では,この規定が排除されています(人事訴訟法19条)。
このほか,民事訴訟法157条以外では,157条の2(審理計画が定められている場合の時機に後れた攻撃防御方法の却下),159条(自白の擬制),179条(自白),207条2項(当事者尋問の補充性),208条(当事者本人不出頭等の制裁),224条(当事者が文書提出命令に従わない場合の制裁),229条4項(文書の筆跡の対照に協力しない場合の制裁),244条(欠席判決)の規定が排除されています(LP離婚調停・離婚訴訟37頁)。

人事訴訟は公益性のある訴訟で,可能な限り実体的真実が発見される必要があるため,民事訴訟の原則である弁論主義に由来する規定の適用が排除されています。

離婚訴訟を含めた人事訴訟では,証拠や主張によって訴訟の結果が変わるのであれば,そちらを優先して,真実に沿った形で審理・判決をしなければならないということになります。