同一事故の被害者が,先行する他の被害者が提起した訴訟に補助参加できるか(結論:参加の利益はないが,異議が出なければ参加できる)

 民事訴訟法では,補助参加という制度が定められています(民事訴訟法42条)。

 補助参加とは,訴訟の係属中,当事者の一方の勝訴について法律上の利害関係を有する第三者が,その当事者を補助して訴訟を追行するために訴訟に参加することをいいます。

 典型的な場合として,債権者から主債務者に対する訴訟において,保証人が補助参加する場合があげられます。

 では,どのような場合に補助参加をすることができるのでしょうか。

 たとえば,火災がある家(A)で起きて,その火災が両隣(BおよびC)に延焼した場合,BからAに対する不法行為損害賠償請求訴訟に,CがBの補助参加人として参加することはできるのでしょうか。

 ここで,「法律上の利害関係」を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上また公法上の法的地位または法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいいます(最決平13・1・30民集55-1-30参照)。

 そして,訴訟の結果についての利害関係 この利害関係は,訴訟の結果について必要となります。

 この関係を通説は,参加人の法的地位を判断する際に本訴訟の判断が論理的な前提となる場合と表現します。

 そのうえで通説は,ここでいう訴訟の結果とは,その訴訟の訴訟物たる権利または法律関係についての本案判決主文で示される判断をいい,これが第三者の法的地位に影響を及ぼすおそれがあるとは,参加人の権利義務その他法律上の地位が訴訟物たる権利関係の存否を論理的前提とする場合を指すと説明しています。

 たんに判決の理由中で判断されるにすぎない事実や法律関係の存否について利害関係を持つだけでは足りないいうことになります。

 これは,判決理由中の判断は当事者間においてさえ既判力を生じないことが理由です。

 この結果,通説によれば,同一の事実上または法律上の原因に基づき,当事者の一方と同様な境遇,立場にあるというだけでは,補助参加につき利害関係があるとはいえないことになります。

 そのため,同一事故に基づく共同の被害者は,参加の利益を否定されることとなります(条解民事訴訟法231ページ)。

 つまり,CはBのAに対する訴訟について参加の利益がないということになります。

 ただし,補助参加について異議を述べるかは当事者に委ねられています(民事訴訟法44条)。

 そのため,当事者から補助参加について異議が出なければ,CがBのAに対する訴訟に補助参加することは可能となります。