財産開示期日の呼出状を公示送達の方法により送達したが不出頭の場合,処罰されるのか(結論:正当な理由の有無による)

令和元年の改正民事執行法で,債権者から債務者に対する財産開示手続の制度が強化されました。

裁判所は,財産開示手続の実施決定をしたときは、当該決定を債務者に送達しなければなりません(民事執行法197条4項)。

また,財産開示期日を指定したときは,開示義務者(具体的には債務者又はその法定代理人若しくは代表者)を期日に呼び出さなければなりません(民事執行法198条1項)。

決定や呼出状の送達は,債務群等の住所に宛てて特別送遠の方法によって行われるのが原則です。ただ事案によっては,債務者等の住所が不明であるためその住所に宛てて送達をすることができないこともあり得ます。

そのような場合には,改正民事執行法のもとでは,個別具体的な事案の内容によっては,公示送達の方法により呼出状を送達することが許容され得ると考えられます(民事執行法第20条による民事訴訟法第110条の準用)。

この点,従前だと財産開示手続の実務では公示送達の方法によることはできないという考え方もありました。

しかし,今後は,改正法により第三者からの情報取得手続が導入されたことにより,債権者は,財産開示手続を実施した後に,不動産に関する情報取得手続や給与債権に関する情報取得手続を実施することができます。

そのため,債務者等の住所が不明である場合であっても,手続を実施する意義があると考えられることから,公示送達の方法によって決定や呼出状を送達することを制限する理由はないと考えられます。

では,公示送達の方法によって呼出をされたが,債務者等の開示義務者が出頭しなかった場合,開示義務者は処罰されるのでしょうか。

「民事執行法第213条 次の各号のいずれかに該当する者は,六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する

5号 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において,正当な理由なく,出頭せず,又は宣誓を拒んだ開示義務者」

という条項が問題となります。

公示送達による呼出の場合は,開示義務者の不出頭に「正当な理由」があったか否かが問題となります。

「正当な理由」の有無は裁判所の判断に委ねられますが,個別具体的な事案における事実と証拠に基づいて,「正当な理由」があったかが判断されることになります(Q&A令和元年改正民事執行法制38ページ)。

一般論としては,公示送達の場合には呼出に応じないことにも一定の理由があると思われるため,「正当な理由」があるものとして処罰まではされないことが多いでしょう。

しかし,財産開示手続に至るまでの事実の経緯と証拠に基づき,意図的に裁判所の呼出を無視したため,裁判所が公示送達の方法によらざるを得なくなったような場合には,「正当な理由」があるとは言えないと判断されることになろうかと思います。

この解釈は公示送達の場合を念頭に置いていますが,特別送達ではなく,付郵便送達による呼出をした場合にも,この趣旨はあてはまると私見では考えます。

当事務所では令和元年民事執行法改正に基づき第三者に対する財産開示手続を行った経験があります。債権回収は困難な場合もありますが,いろいろな手続を知っておく必要はあると思います。