支払督促手続を利用できない請求はあるか(結論:将来の給付請求,期限付請求,停止条件付請求は督促手続によることが許されない)

簡易裁判所では,支払督促手続という手続を取り扱っています。

書面で手続が進み,督促異議の申立てがなければ支払督促に仮執行宣言を付され,これに基づいて直ちに強制執行できる手続であるため,使い方によっては便利な制度となっています。

では,どのような請求であっても支払督促を利用できるのでしょうか。

まず,①引換給付請求・②代償請求については,いずれも督促手続によることは可能とされています。

次に,③即時に強制執行のできない将来の給付請求については,原則として,支払督促を発することができません。

ただし,遅延損害金を付帯請求として請求する場合には,発付時以降の分についても認めることができるとされています。

そして,④期限付請求は,直ちに執行することができない性質のもので,督促手続が債権者に簡易迅速に債務名義を取得させることを目的とするものであることから,これを利用することは許されないと解されています。

ここで期限到来の有無の判断の基準時ですが,支払督促申立て時において期限が到来していることを要するとされています。

最後に,⑤停止条件付請求は,督促手続によることが許されないと解されています。

仮執行宣言付支払督促は,承継の場合を除き,執行文の付与を受けることなく,強制執行をすることができる(民執25条但書)ため,停止条件付請求について適格性を認めると,条件の成就に関して債務者に争う機会が与えられることなくして強制執行をすることができることになるためです。

しかし,停止条件付き請求と異なり,⑥解除条件付請求は,支払督促申立て時に給付請求権が存在しており,直ちに強制執行ができるため,督促手続によることが許されると考えられています(簡易裁判所民事手続法 (新・裁判実務大系)467ページ)。

支払督促手続は便利な手続ではありますが,請求内容や相手方の状況を踏まえて,訴訟とどちらを選択するかの判断が必要になります。支払督促手続が利用できない請求は訴訟提起をするしかありませんが,どちらも利用可能な場合にどの手続を使うかを決めるには,ある程度経験が必要ではないかと思います。