不法行為の損害賠償につき時効は何年か(結論:生命身体については5年または20年)

交通事故によって大きな怪我をしてしまった場合,怪我の治療期間が年単位でかかることがあります。

また,交通事故の加害者がわからず,交通事故の発生時から総統の年数がたって加害者が判明する場合もあります。

このような場合,交通事故による損害賠償請求権が時効によって消滅してしまわないかが問題となります。

この点,改正前民法では,不法行為による損害賠償請求権は請求することができるようになってから3年で消滅時効が完成すると定めていました。

また,加害者がわからないような場合,20年が経過すれば権利行使できなくなる(除斥期間との解釈)とされていました(最判平成元.12.21)。

しかし,改正後の民法では不法行為の消滅時効につき特則が設けられ,人の生命身体を害する不法行為についての短期消滅時効は5年とすることが定められました(改正後民法724条の2)。

また,20年の期間についても,「次に掲げる場合は,時効によって消滅する」とした上で,前記の主観的起算点から3年の権利消滅期間と並べて「不法行為の時」(客観的起算点)から20年で消滅すると規定し,長期の権利消滅期間もまた消滅時効であることを条文上明らかにして,この期間制限が除斥期間であると解釈していた従来の判例・通説を積極的に否定しています。

例えば事故から20年経過直前に症状固定とされ, 自賠責保険における後遣障害等級認定がその後になされたために訴訟提起が20年経過後になった場合(水戸地裁下妻支判平成25.10.11)などでは20年の消滅時効が問題となりえます。改正民法施行後は,被害者は20年経過前に時効中断を行うことが可能になり,かつ20年経過後であっても,時効中断がなされなかった事実経過もふまえ,債務者(加害者)による時効援用が信義則違反等になるかが検討されることになります(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(2017)下巻 103ページ)。

そしてこの改正により,例えば交通事故で大きな怪我をしてしまい,後遺障害認定がされるまで4年かかってしまったとしても,怪我について損害賠償請求権が消滅することはなくなりました。