継続的取引の支払につき消滅時効を主張された場合,債務承認があったと反論できるのか(結論:都度都度弁済する契約か,一部入金かで異なる)

事業者間で継続的な取引がされていることがあります。

例えばA社とB社の間で,A社が金属原料の卸販売をしてB社がA社に対して毎月支払が発生するような例が想定されます。

このような場合に,現時点まで継続的取引を行っているが,B社に未払があり,かつ支払発生日から5年が経過しているとして消滅時効を主張された場合,A社はB社が毎月支払をしていることを理由に債務承認があったと反論できるのでしょうか。

まず,継続的取引の場合にどのような支払方法であったかを検討する必要があります。

毎月ごとの売上げ,請求を各別に明示した上,明示された金額全額を支払い,未払額を翌月に残さない形で支払がなされていた場合があります(以下「全部弁済型」という)。
次に,毎月ごとの売上げ,請求は明示されるが,債務者がその一部を内金入金とし支払い,未払残高が毎月あるいは特定の時期に発生していたような場合があります(以下「一部入金型」という)。

この点,一部入金型で債務承認があったか争われた東京高判昭41・10・27判時469・41では,債権者の示す残債務額を全面的に納得した上で支払ったものでないとしても,その当時真正に残っている債務全体に対する内入れの趣旨で支払をした場合には支払の都度その当時における総残債務を承認したものと認めるべきであるから,支払の都度総残債務の時効が中断しているとして,時効中断効を認めています。

これに対して,全部弁済型の場合には,毎月の当該支払によって債権債務は全て消滅し,未払は存在しないという黙示の了解が成立しているといえるため,時効中断が成立しないとなるでしょう。

ただし全部弁済型であっても,全部の弁済でないことの問題意識が債権者側にあり,そのことを債務者側も知っていたことが立証できれば,特段の事情があったとして時効中断が成立する可能性もあります(〔改正民法対応版〕続 時効の管理205ページ)。